スパイクを買いに
スポーツ店に向かう
陸上部への正式な入部が決まった。
活動に必要なスパイクを買いも求めに息子とスポーツ店に向かった。店内に入ると彼と同年輩と思われる少年・少女を見かけた。この子等もクラブ活動に必要な物を買い求めにきたのだろう。
陸上関係の商品は4階、エレベーターに向かう彼を呼び止めた。
『おい!もう身体作りを始めよう。階段で行くぞ!』
彼は、笑顔で私を見上げた。
そして共に階段を登って行った。
フロワーに着くとつかさず店員が、近寄って来た。私は、スパイクを求めに来た事を告げ商品選択のアドバイスをお願いした。
店員に促されスパイクの陳列されている棚に彼は向かって行った。本来は、一緒に行ってスパイクの選択に関わりたい思いもあったが、私が走っていた時からもう約30年も経っている当時と比べたら商品も良くなり選定の基準も変わって来ているので店員にお任せした。
閲覧用に置いてあった「月刊 陸上競技」を手に取り近くの椅子に座り待つ事にした。
さまざまなスパイクを試しながら店員と会話をしている彼を時々、眺めながらページを進めて行った。
約1時間ほどで一足のスパイクを持って彼が、やって来た。
『これに決めたのか?』
頷く彼。
『決めた理由は?』
返って来た答えは、一番安かったからとの事であった。
私は、彼を伴い陳列棚に向かった。
『本当に自分が、良いなと思ったスパイクはどれか正直に教えてくれる?』
彼は、気まずそうにあるスパイクを指さした。
『じゃ、それにしよう。』
戸惑いを見せた彼。
『陸上部で頑張るんだろう?ならば、自分が納得したスパイクを履いて欲しいんだ。』
手に持って来たスパイクを元に有った場所に戻しに行き戻って来た彼は、指さしたスパイクを手に取り満面の笑顔を私に向けた。
先の事は、どうなるか?分からない。(辞めてしまうかもしれない。)
しかし、この時点で彼の意気込みを確認してみたかった。
この後、サイズ合わせをして無事にスパイクを買い終え、店をあとにした。
妻から言われていた金額から数千円ほどオーバーしたが、彼が頑張ってくれる事で十分に取り戻せると思うバカな父親でした。